Masuk父親を亡くし、入院中の母を養っている私――須藤朱莉は、ある大手企業に中途採用された。けれどその実態は仮の結婚相手になる為の口実で、高校時代の初恋相手だった。 二度と好きになってはいけない人。 複雑に絡み合う人間関生活。そしてミステリアスに満ちた6年間の偽装結婚生活が始まった――
Lihat lebih banyak「本当の兄妹じゃない……? 一体どういうことなんだよ……」するとまどかは涙を浮かべながら語りだした。「私とお兄ちゃん……鳴海グループの人間なのに……各務って名字なの……変に思わない?」「あ? ああ。言われてみればそうだな。だけど大企業ともなると一族の人間じゃなくて、どこからか優秀な人間をヘッドハントして社長に据えるのも別に珍しい話じゃないだろう?」「お兄ちゃんはね……最初の名字は……鳴海だったんだよ」「え……?」「つまり、お兄ちゃんはお父さんとお母さんの子供じゃないんだよ」まどかはハンカチで涙を抑えた。「ど、どういうことなんだよ……」「お兄ちゃんのお父さんはね……鳴海翔って人なの。そしてお母さんは血のつながらない義理の妹の明日香って人なのよ。おじさんは私のお母さんと結婚していたのよ。だけど、おじいさまがおじさんの事気に入らなくて、離婚させてしまった挙句、次期社長になるはずだったおじさんを追い出してしまったのよ。そして変わりに社長になったのが私のお父さん……各務修也なんだよ。そしてお母さんは元鳴海翔の妻の朱莉。だからお兄ちゃんはね、お父さんのいとこの子供なの」「ま、マジかよ……その話……。いや、でも……それを言ったら俺だって似たような境遇かもな」「え……? どういうことなのよ……?」いつのまにか、まどかの涙は止まっていた。代わりにその瞳には好奇心が宿っていた。「俺も父親と血が繋がっていないからな」「そうなの!?」まどかは驚いて目を見開いた。「ああ、それに母親も違う。実の母親の妹が今の俺の母親なのさ」「!」「俺の父親は酷いDV男だったらしくて、母は離婚したらしいんだ。そして自分の妹と俺と一緒に3人で暮らしていたらしい。だけど、母親も癌で亡くなって、今の母が代わりに育ててくれたんだよ。そんな時に九条琢磨と知り合って結婚したのさ」「そ、そんな……」まどかは呆然とした顔で話を聞いていた。「それにしてもこんな偶然あるんだな? 漢字こそ違うけど、同じ名前だし、実の両親では無いってところまでそっくりだ。挙句に……」そこまで言うと、簾は肩を震わせて笑った。「その各務蓮の妹が……恋する兄の見合いをぶち壊す為に見合い現場にやってくるんだから……。片や俺も好きな女の見合いが我慢できなくてやってきてしまったし……」そしてまどかを見つめた。「俺
「は~全く……貴方のせいでもう今更2人の見合いの席に侵入すること出来なくなっちゃったじゃないのよ……」ブツブツ文句を言いながらまどかは足で木の根元を蹴っている。「全く随分乱暴な女だな。栞とは大違いだ」その言葉を聞いてまどかが反応した。「栞……そう、それよ。ただの幼馴染がわざわざお見合いの様子を見に来るなんて何かおかしいと思ったのよ。貴方ひょっとして二階堂栞と付き合っていたの? それじゃあの女、男と付き合っているのに、お兄ちゃんとお見合いしているのね!? 最っ低だわ!」しかし、それを言われて面白くないのは簾の方だ。仮にも自分が好きな女性が見合い相手の妹に悪口を言われるのは我慢出来なかった。「違う! 栞と俺は単なる幼馴染だ! 俺が一方的にあいつに惚れてるだけなんだよ!」廉は自分で言って、酷く惨めな気持ちになってしまった。その証拠にまどかの顔には同情が宿っている。「嘘……? 貴方、片思いしていたの? 告白もせずに? 20年間も!? 可愛そうな男ね……」「な、何だよ……! そういうあんただって、ブラコンのくせに! どうせ大好きなお兄ちゃんが他所の女の人に取られるなんて許せなーい! とか言って見合いぶち壊しに来たんだろう?」「うわ! キモッ! この人……キモいわっ!」まどかが両肩を抱きしめた。「だ、誰がキモいだ! 大体見合いをぶち壊すなんておかしいだろう!? どうせ兄妹なんていつかは離れなくちゃならないんだから……。え? どうした? 何で泣いてるんだ?」廉は突然まどかが顔を赤くして目に涙を浮かべている姿を見て驚いた。「……じゃないもの……」「え……? 何て言ったんだ……?」するとまどかは顔をキッと上にあげた。「私とお兄ちゃんは……本当の兄妹じゃないもの!」「え……?」廉は驚いてまどかを見た――****「実は僕もお見合い…最初から断るつもりは無かったんですよ」蓮は、はにかみながら答えた。「あら? そうなのですか?」「はい、二階堂社長は僕がまだ赤ん坊だった頃から知っていたそうなんですよ。それに父のことも母のことも良く知っているそうなので。そう言う人の義理の息子になるのも悪くないのかなと思いました。それに栞さんの評判も聞いていましたから」「え……? 私の評判?」栞は自分の評判が社内で良くないのは知っていた。『ラージウェアハウス』
息を切らせながらまどかと簾は走ってホテルの中庭迄逃げてきた。庭に植えられた大木に手をつき、呼吸の乱れた息を整えるとまどかは簾をジロリと睨みつける。「ちょっと! あなた、いったいどういうつもりよ! あなたのせいで2人の様子を見張れなくなったでしょう!?」「うるさい! そういうあんただって大きな声を出しただろう!? 俺ばかり責めるな!」簾は大きな声で言い返した。しかし、まどかは廉の文句に聞く耳を持たず、ぶつぶつと呟く。「全く……お兄ちゃんのお見合いをぶち壊してやろうとここまで来たっていうのに……」それを耳にした簾はまどかに尋ねた。「何? あんた……あの各務蓮の妹なのか?」「は? 人に物を尋ねるときは、まず自分から名乗るのが筋じゃないの? それに……その様子だとあなたは二階堂栞の知り合いみたいね?」(全く失礼な男ね……お兄ちゃんとは大違いだわ! これだからガサツな男っていやなのよ)「俺は九条廉。あんたの今話していた二階堂栞の幼馴染だ。ちなみに簾ていうのはこの字だ」簾はボディバックからスマホを取り出して、文字を打ち込んでまどかに見せた。「え……? 九条廉……? 漢字は違うけどお兄ちゃんと同じ名前なのね? それに確か九条って言ったら……あの二階堂家と共同して経営してる九条家の?『ラージウェアハウス』の?」「ああ、俺の父親は九条琢磨。二階堂家と共同経営している社長だ」「嘘!? それじゃ……あなた、大企業の御曹司なわけ!?」まどはか心底驚いた様子で簾を見た。「別に……鳴海グループほど大企業じゃないけどな……まあ、一応そうだ」「うそ! そんな……全然見えない! だって全然品位が無いじゃない! その見るからに安そうなTシャツにデニムのパンツ! よくもそんな恰好でホテルにやってこれたわね?」「う、うるさい! そういうあんただって、各務蓮をお兄ちゃんて呼んでたくらいだから鳴海グループの令嬢なんだろう?」「ええ、そうよ」まどはか腕組みしながら答える。「なんだよ! そのド派手な格好は! キャバ嬢みたいな洋服を昼間から着やがって!」「何がキャバ嬢よ! これは外国の有名なブランドショップの服なのよ!? それにキャバ嬢の服って可愛くて素敵じゃないの!」「う、うるさい! 俺だって一応古着店で買ったこだわりの服なんだよ!」いつのまにか簾とまどかは互い
栞がカフェにやってくる5分ほど前――(あ、あの席ね!)蓮の姿を見つけたまどかは彼のテーブルから1席分開けたテーブル席を陣取ると、雑誌を取りだして顔を半分隠すような姿で蓮の様子をうかがっていた。そこへウェイターが水を持ってやってきた。「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」「アイスコーヒー1つ」まどかはウェイターの顔も見ずに素早く応えた。「かしこまりました、アイスコーヒーですね?」ウェイターは頭を下げるとすぐに下がって行った。「全く……本当にお見合いにやってくるなんて……」ぶつぶつ言いながらまどかは蓮の様子をうかがっていると、ふとあることに気がついた。蓮の周囲に座る女性客が熱い視線で蓮を見つめているのである。その時、不意にまどかの耳に2人組の女性客の会話が飛び込んできた。「ねえねえ……あの男の人見て?」「うん。すっごいイケメンだよね?」「背も高いし、着ている服もすごいよ?」「どこかのモデルか芸能人かな?」そんな会話をまどかは誇らしげに聞いていた。(当然よ! 私のお兄ちゃんなんだから!)しかし、そのうちにとんでもない内容を話し出してきた。「ねえねえ、声かけてみない?」「そうね……1人で来ているみたいだし……」「うん、お金持ちそうだし、どこかに遊びに連れて行って貰えるかもしれないものね?」(な、何ですって~!)思わず、その女性客をキッと睨みつけた時……。「あ! 見てよ! あの女……彼に近づいてる!」「え~あ……何だ……デートだったのね」残念そうに言う2人の会話にまどかは慌てて、蓮のいるテーブルを見た――****「こんにちは。各務さんですね?」不意に窓の外を眺めていた蓮は声をかけられて振り向いた。するとそこには本日の見合い相手である二階堂栞が立っていた。蓮は立ち上がると挨拶をした。「初めまして、各務蓮です。どうぞ掛けてください」「はい、失礼します」栞は椅子を引くと、蓮の向かい側の席に座った。そしてテーブルの上にはまだ水しかのっていないことに気が付き、ちらりと蓮を見た。すると蓮も栞が何を言いたいのか理解した。「まだ何も頼んでいないんです。二階堂さんが来てから一緒に注文しようかと思って……何にしますか?」蓮はメニューを栞の前に置いた。「ありがとうございます」栞はメニューを広げると、少しの間眺めてい
「翔さん、落ち着いて下さい。医者の話では出産と過呼吸のショックで一時的に記憶が抜け落ちただけかもしれないと言っていたではありませんか。それに対処法としてむやみに記憶を呼び起こそうとする行為もしてはいけないと言われましたよね?」「ああ……だから俺は何も言わず我慢しているんだ……」「翔さん。取りあえず今は待つしかありません。時がやがて解決へ導いてくれる事を信じるしかありません」やがて、2人は一つの部屋の前で足を止めた。この部屋に明日香の目を胡麻化す為に臨時で雇った蓮の母親役の日本人女子大生と、日本人ベビーシッター。そして生れて間もない蓮が宿泊している。 翔は深呼吸すると、部屋のドアをノッ
寝不足ではあったが、明日からの仕事を楽にして朱莉と2人で沖縄観光をする為に航は仕事を頑張った。対象者を尾行し続け、ついに浮気の決定的瞬間を動画に収めることに成功したのだ。カメラをリュックにしまう航の顔には笑みが浮かんでいる。「よし、この証拠映像があれば依頼主は確実に有利な条件で離婚することが出来るだろう」小さく呟くと、周辺を伺いながら身を隠していた茂みの中から出てきた。空を見上げると大分太陽は西に沈み、沖縄の空がオレンジ色に変化している。「さて、帰るか」航はリュックの中に機材をしまうとその場を後にした——**** 朱莉は家で夜ご飯の準備をしていた。今日のメニューはキーマカレー。
(え……? あ、朱莉……。それは……一体どういう意味なんだ!?)航は次の朱莉の台詞に期待しながら尋ねた。「あ、朱莉。何故俺だと楽しく感じるんだ?」「うん。それはね……航君だと気を遣わなくて済むって言うか、一緒にいて楽な人……だからかなあ?」「あ、朱莉……」(え……? こ、こういう場合俺はどう解釈するべきなんだ? 喜ぶべきなのか? それともがっくりするべきなのか? わ、分からねえ……やっぱり朱莉の気持ちが俺には分からねえ……)朱莉の発言に航は頭を抱えてしまうのだった—―****「残念だったな。あの水族館で食事出来なくて……」駐車場に向って歩きながら航が残念そうに言う。「うん
「い、いや。だって事実そうだろう? あの京極という男のせいじゃないのか? 大体最近のお前少しおかしいぞ? 以前のお前ならもっと冷静沈着な男だったじゃないか」翔の言葉は、増々琢磨を苛立たせた。「そうかい。それは誉め言葉だと受け取っておくよ。ようするに今の俺は以前より人間味が出て来たってことだろう? だがな、これだけは言っておく。これ以上お前達の我儘身勝手に朱莉さんを巻き込むな!沖縄までわざわざ呼びつけたんだから少しは彼女を解放してやるんだな?」琢磨が2人を交互に見ながら言うが、翔は反論した。「いや。それは出来ない。そもそも朱莉さんを沖縄に呼んだのは明日香の側にいて貰う為だ。何かあった時
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